2008年03月22日

ラフマニノフ交響曲第1番二短調

 パソコンに向かって仕事をしていたが、ふと窓のほうを見上げてみると外はもう真っ暗になっていた。ターレー(市場用の荷車)を返しにいくのを忘れていたことを思い出し、慌てて外に出たのであった。外に出ると目の前の海面すれすれのところにに赤い満月が浮かんでいた。満月の向こうには房総の低い山々の黒い影がくっきりと見える。月のまん前を、しきりにジェット機が横切るのだった。

 昼間は暖かく、運河沿いの木蓮のつぼみもいつの間にかはじけて半を咲かせていたのだが、夜の風はまだひんやりとしていて、まだ春も早いかなという感じだ。それでも風は柔らかく、希望の光がもう近くに見えそうな毎年訪れる期待感に満ちている。僕は冷たい風を切ってターレーをとばた。満月は少し不気味なオレンジ色に輝きながら僕を追いかけてい来る。


 今日はラフマニノフの交響曲第1番。早春の満月を見ながら、どんな曲がこの詩情に合うかと考えたのだった。この曲は初演で大失敗しラフマニノフはノイローゼに陥るのだが、僕は逆に彼がこの曲に対していかに自信を抱いていたかということを考えてしまう。青年の意気込みと感傷がデモーニッシュに交差するこの作品は大傑作である。後の傑作である第2交響曲、第2ピアノ協奏曲にはない、運命のようなものがデモーニッシュに迫り来るような胸をぞくぞくさせる興奮がある。オーケストラは驚くほどよく響く。


 彼は早熟の天才だった。この曲は、こつこつ積み上げ型の作曲家が作り出すものとはまるで違う、完成された風格がある。春の夜風はほろ酔い気分になるには冷たすぎるが、満月を見ながらこの曲を想うとなんだか酔えそうな気がしてくるのだった。
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2008年05月29日

ラフマニノフ 交響曲第2番ホ短調

 時刻は夕方。目の前の運河をポンポン船が港の方に向かってゆっくり進んでいる。朝と同じように鉛色の空からは若干勢いを失ったが雨が落ちて、鉛色の波に降り注いでいる。運河に沿った緑の街路樹は降り注ぐ雨にいっそう生き生きして見える。「恵みの雨」「すべての未練を、失敗を洗い流してくれる雨」この雨を浴びながら、どれだけ成長できるだろうか?

 ラフマニノフの交響曲第2番。ラフマニノフの2番といえばピアノ協奏曲第2番が有名だが、僕にとってラフマニノフの第2番とはこの曲のことを指す。曲想は暗いが、幸福と憧れと回想が入り交じったような独特の美しい情緒は、彼のオーケストラ作品随一である。降りしきる雨と繰り返し寄せ返る波を見ていると、不思議とこの曲想を想像してしまうのはなぜだろう?

 ラフマニノフはご存じの通り、第1交響曲の初演失敗によってノイローゼに陥ってしまう。ダーリ博士の精神療法を受けながら、傑作第2ピアノ協奏曲を書いて自信を取り戻すのだが、交響曲においては自信をもてずにいたようである。そのような彼が夏の避暑地で2ヶ月という短期間のうちに作曲したのがこの曲である。

 僕は第1楽章のほの暗く美しい情緒は、過去の失敗を引きずりながらも、それは「過去のほろ苦い思い出として」降り続ける雨のと共に流してしまおう、そして新しく生きていこうとする気持ちの表れのように感じてしまう。そして、3楽章のアダージョは、美しい音楽の波が寄せては返しながら、次第にうねりが大きくなり僕たちを飲み込んでしまうのだが、作曲者自身が自らの苦い思い出を美しい音楽で何重にも包み込みながら、幸福の絶頂を目指していく。「苦い思い出」も「甘美な思い出」となり、自信と希望をもって、「さあこれから僕の時代が始まる」と喜びと回想の行進曲へ。

 さて、こんなすばらしい曲を聴いたら、誰もが熱心なラフマニノフファンになること間違いなしなのだが、残念ながらこの曲を越える作品は他にはないのではと思われる方もいるのではないだろうか?彼は作曲家以上に演奏家だった。また、彼のようなロマンティックな音楽は20世紀前半においては時代遅れの音楽として評価されなかった。そういう意味で、この曲がロシアの避暑地で短期間で作曲されたことは非常に価値があると思っている。
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2008年08月28日

ラフマニノフ ピアノ協奏曲第1番嬰ヘ短調

 客船の汽笛から物語は始まる。どんよりと曇った灰色の空と海に、力強く汽笛は響く。港の岸壁に当たって白く砕け散る波に緊張感と悲壮感を募らせながらも、遠いか近いかよくわからない未来への期待感を胸に旅立つ。

 オーケストラが演奏する憂いの中に流れる甘美なピアノの響き。ロマンティックな音楽と言えば、ラフマニノフ。思いっきりロマンティックな音楽に身を浸したいときはラフマニノフに限る。20代の頃ラフマニノフのCDを買い集めたが、意外とこの人の作品は少ない。オーケストラ作品からピアノ曲までジャンルは広いが、作品番号のついている作品は45曲しかない。もっと多くのロマンティックなラフマニノフの作品があったらどんなにいいだろうか。ブラームスの交響曲が4つしかないのと同じように、ものたら無さを感じるのは僕だけではないだろう。

 この曲を聞くと海の情景が浮かんでくる。冒頭に汽笛の話を出したが、この曲の第1楽章冒頭の金管楽器の響きは汽笛のようだ。また、第2楽章のアダージョは日本海の砂浜に打ち上げる荒波と海上を舞うカモメの鳴き声のよう。僕は大学卒業後、札幌で2年間フリーター生活を送った。ある期間、小樽で仕事をしていたのだが、毎日札幌から小樽まで函館本線で通った。線路は小樽市に入った辺りから海岸線に沿って伸びる。その時、車窓から見た景色を僕はいつも思い出す。僕は北海道ではストレインジャーというアイデンティティを自ら作り出していたので、景色は僕の心により鮮烈に共鳴したのだろう。

 この作品には、記念すべき作品番号第1がつけられており、ラフマニノフ18歳の時の作品である。オーケストラもピアノもすでに完成された響きを持っている。まさに早熟の天才。作品1から傑作なので、確かにラフマニノフの作品は当たりはずれがない。ただ、逆に完成されたスタイルを持って世に出たために、生涯途中にして作曲のモチベーションが落ちてしまったのではないのだろうか。アメリカ時代の、ピアノ協奏曲第4番や交響的舞曲を聴いていると、何だかインスピレーションが枯渇しているような気がする。このことに関しては、天才ロッシーニが生涯半ばにして音楽生活から身を引いたことにつながるものがあるように思う。そういう意味では、天才モーツァルトの作品は生涯にわたって常に進化しており、彼らとは一線を画している。「求道者」か「エンターテナー」の違いなのだろうか?
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2009年10月17日

ラフマニノフ 交響曲第3番イ短調

 秋の夜。仕事からの帰り道。ひんやりとした草むらから虫の声が聞こえてくる。夜空は澄み切っていて、飛行機が次々と横切っていく。


何かほっとした思いとちょっと疲れた思い


 ラフマニノフの交響曲第3番はアメリカ時代の作品。夜が更けていくような美しい叙情と、時折見せる明るいライトが輝く都会の舞曲のようなリズムが適度に溶け合った円熟の作品だ。


祭りは過ぎ去り、淡い思い出に浸る。明日に希望を抱きながら

第1交響曲のようなデモーニッシュさや、第2交響曲のような感情のうねりはないが、疲れたとき僕はこの曲を聴きたくなるのだから、先の2曲にはない癒しの力があるのだろう。


創造の泉はまだ枯れていない





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2009年10月21日

ラフマニノフ 『ロシア狂詩曲』

 10月の快晴の朝の空。鳴り続ける鐘の音と将来への期待。ラフマニノフの『ロシア狂詩曲』のさわやかな抒情がぴったりくる。

 作曲者18歳の時の作品で、習作と言えばそれまでだが、

さわやかさ
素朴さ
透明なガラスのような抒情


がそろった佳作だと思う。ラフマニノフの長所は技巧や新しい表現ではなく、どこまでも情緒の豊かさにある。そして、彼の音楽のルーツとしての


チャイコフスキーとロシア


を感じ取ることができる。もっともチャイコフスキーもロシアの作曲家だから、ルーツを「ロシア的抒情」とでも呼んだほうがいいのかもしれない。

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2009年11月03日

ラフマニノフ 交響的舞曲

 秋の舞台。バレエの透き通る叙情がよく似合う季節になってきた。紅葉が湖面に美しく生える光景は


白鳥の湖
ローエングリン


の音楽を髣髴とさせる。零れ落ちるような透き通った叙情を持つ作品を僕は求めた。僕が興味を持ったのはラフマニノフだった。ラフマニノフのバレエ曲だったら、チャイコフスキーなみのきっと叙情あふれるものに違いないと。

 チャイコフスキーが開いたバレエ音楽というジャンル。彼に続くロシアの作曲家にとってバレエ音楽の作曲は無視することのできないジャンルであった。


ストラヴィンスキーは『火の鳥』『ペトルーシュカ』『春の祭典』

プロコフェエフは『ロメオとジュリエット』『シンデレラ』『石の花』

グラズノフは『ライモンダ』『四季』


ラフマニノフの交響的舞曲は当初はバレエ音楽として作曲されるはずであった。

第1楽章 朝
第2楽章 昼
第3楽章 夜


という構想だった。が、実際出来上がったものは、交響曲のような絶対音楽で、交響曲第3番に近い雰囲気を持っている。叙情的な要素を持ちながらも、どこか都会的な雰囲気や不安、胸騒ぎを感じさせる。


この作品にはオーケストラ版と2台のピアノ版があるが、僕は2台のピアノ版の方を好む。実際に、先に作曲されたのは2台のピアノ版だった。オーケストラ以上に交響的だと思う。

晩秋の都会の星空を見ながら、聴きたい1曲である






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