一般的に名前が良く知られていながら、その作品の一部しか知られていない作曲家の一人がメンデルスゾーンです。メンデルスゾーンの代表作といえば、
交響曲第3番『スコットランド』
交響曲第4番『イタリア』
劇音楽『真夏の夜の夢』そして
ヴァイオリン協奏曲ホ短調です。CDも多いのはこれらの曲だけで、不思議なことに他の曲は驚くほど少ないです。また、評伝などの書籍も本当に少ない。ということで、
僕はメンデルスゾーンの肩を持っています。 さて、ヴァイオリン協奏曲ホ短調ですが、この曲はクラシックファンの間では『
メン・コン』の愛称で親しまれています。その抒情的な美しさとコンパクトにまとまった構成はまさにヴァイオリン協奏曲の
女王です。
それにしても、有名な第1楽章第1主題の旋律は不滅の名旋律だと思います。この曲に出合った時の感動を今でも思い出します。前にもスコットランドのところで言いましたが、僕のクラシック歴はメンデルスゾーンから始まりました。
『真夏の夜の夢』
『フィンガルの洞窟』
『スコットランド』
『イタリア』 この風景や物語を想起させる美しいタイトルに惹かれて、僕は中学生の時LPを買いました。「きっとどこかで聞いたことのある名旋律があるに違いない」と胸を躍らせながら。実際に聴いてみると、大興奮。「
メンデルスゾーンはベートーベンよりもすごい」ベートーヴェンの曲をまともに聴いたことがなかった当時、僕は本気でそう思っていました。それでも、ただひとつ不満がありました。それは、『真夏の夜の夢』の結婚行進曲以外は、巷で一度も聴くことがなかったからです。「なぜ、こんな素晴らしい曲をとりあげないのか」
そんなとき、音楽の教科書にこのヴァイオリン協奏曲が載っているのを見つけました。この曲はメンデルスゾーンの代表作なのですが、ニックネームがないため、クラシックを聴き始めたばかりの当時、目に入らなかったようなのです。「
今度こそ、誰もが知っている名曲に違いない」期待に胸をふくらませ、レコード屋へと向いました。
そして、初めて聴いた時の大興奮。多分、冒頭の有名な旋律は聴いたことがなかったと思うのですが、あまりにも素敵な旋律に「これだ。これならだれもが知っている名曲でないはずがない」と思ったものです。
この曲はメンデルゾーンが35歳の時に作曲されました。作曲を着想したのは30歳前の時だと言われています。『スコットランド』など他の大曲と同じく作曲終了まで数年を費やしています。指揮者としての活動が忙しかったことが外的な原因と言われていますが、僕は内面的な理由があるのではないかと考えています。
10代後半に作曲された『真夏の夜の夢』序曲や弦楽八重奏曲に見られるこんこんとわきあがるような創造力とは別の創造力を後期の作品に感じ取ることができます。
ユダヤ人としてのアイデンティティ。『宗教改革』のところでも述べましたが、成人してからのユダヤ人に対する風当たりの強さは澄み切った彼の心に
暗い影を与えたことは間違いないないでしょう。
美しい作品に、彼は激しい思いと苦悩を封じ込めました。この曲は友人のヴァイオリニスト、ダビッドのために作曲されました。
そう、彼は自分の苦悩よりもダビッドをとったのです。このことは、この曲をより一層美しいものにしていると思います。
posted by やっちゃばの士 at 23:59| 東京 ☀|
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メンデルスゾーン
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