もちろん、シューベルトファンの中にも、愛するべき旋律が一番の魅力と感じている人も多いと思うが、美しいメロディーが果てしなく続いていくその巨大さに虜になった人は、もっとシューベルトの音楽を愛するだろう。
僕は、シューベルトの音楽を聴いていると、さすらい人の姿がいつも浮かぶ。この明るく堂々とした曲についてもそうだ。第2楽章など山野に咲く野花のそばを旅する若者の姿を連想してしまう。
若者の理想、憧れ。完成された芸術、アポロン的なものへの憧れ。全曲を通じて、彼の長大な曲にはめずらしく、暗い影を感じさせるところがない。
ぽかぽかとしてくる春の陽気の中、僕は期待に胸を膨らませるときこの曲を口ずさみながら歩きたくなるのだ。
愛聴盤 フルトヴェングラー、ベルリンフィル(DG)