2010年04月22日

ヴォーン・ウィリアムズ 『ロンドン交響曲』

 ドラッカーの処女作『経済人の終わり』を読んだ。すごい本だった。引き込まれて最初から最後まで一気に読んでしまった。ドラッカーについては、「マネジメント」や「仕事」など主に経営やビジネス系の著者というカテゴリーで捉えられることが一般的だが、それは結果論にすぎないと思う。彼のテーマはあくまで「人間」である。この処女作には、ドラッカーの根本的な思想がぎっしり詰まっている。ドラッカーを真に理解しようとすれば、本書を避けて通ることはできないであろう

 この本はファシズムに関して書いた本なのだが、ファシズムに対抗する人物としてチャーチルが登場する。僕の関心はチャーチルから第2次世界大戦、ロンドンへと移っていった。特に強烈に印象に残ったのは度重なるロンドンへのドイツ軍への空襲である。ロンドンは20世紀の初めには人口が600万人を超える世界最大の都市だった。市民はどのような気持ちで苦難の時代を過ごしたのだろうか。大都市ロンドンを音で描いた『ロンドン交響曲』を聴いてみようという気になった。

 『ロンドン交響曲』はヴォーン・ウィリアムズの9曲の交響曲の第2番目にあたる作品で、1912年から1913年にかけて作曲されている。作曲が完了した1913年は第1次世界大戦が勃発する前年であり、ヴォーン・ウィリアムズは41歳であった。したがって、この曲には戦争の影はなく、大都市ロンドンの日常の風景が生き生きと描かれている。各楽章には次のような標題がついている。

第1楽章 夜明け前から、ビッグベンの音とともに朝の目覚め、やがて街はにぎわいを増していく

第2楽章 夕暮れのロンドン。

第3楽章 夜のにぎわい。

第4楽章 貧者の行進

 このように交響詩的な内容を持っているが、作曲者はあくまでも交響曲のスタンスでこの曲を仕上げている。また、曲には作曲者の抒情と思想がこめられており、印象派風の音楽とは全く違った音楽になっている。

 オーケストレーションは英国の先輩作曲家エルガーのように地味ではなく、色彩感に富んでいる。ラヴェルに管弦楽法を学んだことが影響しているのだろうか。特に1楽章の色彩感は豊かでレスピーギの「ローマ三部作」に通じるものがあるように思う。ちなみに、「ローマ三部作」の作曲はいずれもロンドン交響曲の作曲完成よりも後の時代である。


17世紀〜20世紀半ばまでの世界の中心都市ロンドン
紀元前1世紀後半〜4世紀末までの世界の中心ローマ


 ヴォーン・ウィリアムズが現在のロンドンの街や人々の様子を描いているのに対し、レスピーギのローマは自然や遺跡や名所など風光明美と過去を偲ばせるものを描いているのは、この2つの大都市の特徴を象徴的に表しているように思う。従って色彩感と幻想美ではローマの方に長があるだろう。そのためなのか一般的には「ローマ三部作」の方が有名になってしまっているが、このロンドン交響曲はそれに決して引けを取らない名曲だと僕は思う。

posted by やっちゃばの士 at 00:21| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | ヴォーン・ウィリアムズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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