『死と変容』は僕が始めて買ったシュトラウスの作品だった。カラヤン盤でメタモルフォーゼンとのカップリングだった。曲の雰囲気は違うが、この2つの曲にどんな関連性があるのだろうかと思いながら聴いた記憶がある。
僕は学生の頃、病気で家で横になり、何もする気が起こらなかった時期がかなりある。大学の卒論も、このおかげで途中で放棄し、留年してしまった。そんな苦しい時期によくこの曲を聴いた。葛藤から快方へ、この曲を聴きながら、いつ開けるか分からない暗闇の時間をかすかな希望を抱きながら過ごしたものだ。
今でも、この曲は一番身近に感じる彼の交響詩だ。夜露に濡れた窓ガラスを見ていると、この曲を思い出す。
白露に風の吹きしく秋の野はつらぬきとめぬ玉ぞ散りける 文屋朝康