2009年08月04日

スクリャービン 交響曲第4番『法悦の詩』

 スクリャービンの名実ともに代表する作品。この曲はもっぱらエロティックなエクスタシーを描いたものという評判があまりにも強いので、僕は初めてこの曲を聴くとき、


一体どんな作品なんだろう


というちょっと恐れにも似た感情を抱きました。獣のようにトランペットが吠えまくる印象ばかりが残り、第1番から第3番までの交響曲と比べるととっつきにくい感じがしました。そのせいか、第1番から第3番までをもっぱら聴いていましたが、スクリャービンの世界にどっぷり浸かってから、この『法悦の詩』を改めて聴き直してみると、それまではわからなかった


スクリャービンの意図
第3番までの作品の延長にあること
無駄が省かれた濃縮な作品
ストラヴィンスキーの『火の鳥』を先取りする作品


などといったことが見えてくるようになりました。ちなみに、このタイトルの『法悦』という言葉は原題の『エクスタシー』を意訳したものですが、法悦という言葉は

@信仰的な神聖な喜び
Aうっとりするような喜び、恍惚状態


を意味します。僕はこの曲を何度も聴いて、「エロチックな官能エクスタシー」を描いた曲と解釈するのはあまりにも一面的でもったいないと思いました。もともと音楽とは神聖なものであると同時に官能的なものです。このことは、

人間は心と肉体から成り立っている

ことと同じです。この曲には精神と肉体の恍惚の極みが、音楽によって描かれています。スクリャービンが表現したかったのは

音楽とは恍惚の極み
精神と肉体の恍惚は音楽の極み

つまり

音楽(芸術)と精神(神聖)と肉体(官能)の三位一体

だったのではないかと僕は考えています。


この曲で恍惚の波は、まるで燃え盛る炎のように音楽で表現されています。

小さな炎から大きな炎へ

さきほど、『火の鳥』を先取りしていると述べましたが、この交響曲の冒頭の音楽は、『火の鳥』の印象とよく似ています。2曲の作曲年は

『法悦の詩』が1905年
『火の鳥』が1910年


です。ひょっとするとストラヴィンスキーはスクリャービンの影響を受けたのかもしれません。

さて、2曲に共通するキーワードは「火」、「炎」、「燃える」ですが
これらのキーワードは感情の高まりを表現する言葉としては最適です。

燃える思い
情熱
炎のような信仰


つまり、

エクスタシー(恍惚)とは「炎」で表わされるということになります。スクリャービンの続く第5交響曲の標題は『プロメテウス』です。『プロメテウス』はギリシア神話の火をつかさどる神です。

エクスタシー=炎の信仰

に至るのは極めて自然な流れなのではないかと僕は思います。『法悦の詩』において、スクリャービンは創作の炎の頂点に立ったのではないでしょうか。

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カンディンスキー『モスクワT』












posted by やっちゃばの士 at 00:46| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | スクリャービン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年08月29日

リスト ピアノ協奏曲第2番イ長調

 久々に記事を書きます。研究会のレポートの整理などでブログから遠ざかっていました。夏の音楽について述べようと思っていましたが、気がついたら8月もあとわずか。夜空に浮かんだつきはどう見ても秋の月ですね。

 涼しげな月を見ていると、ゆらゆら動く影のダンスが始まる

 ラプソディックなリストのピアノ協奏曲第2番。月夜に聴きたくなる曲のひとつです。リストのピアノ協奏曲といえば、第1番のほうが有名です。初心者向けのCDでは、

ショパンのピアノ協奏曲第1番
リストのピアノ協奏曲第1番


というカップリングがしばしば見受けられます。そういえば、一昔前に流行したフジコ・へミングのCDにも同様のカップリングが。

僕は第2番の方を好みます。確かに第1番のほうが、はっきりとした4楽章構成で、演奏時間も短く、親しみやすいですが、どこか見せ付けるような威圧感を感じてしまいます。それに対して、第2番は幻想曲風な自由な構成でとっつきにくいですが、ラプソディックで踊りたくなるようなリズムと、夜空に明るく浮かぶ月のように幻想的な音楽は魅力的です。

リストの音楽は非常に聴きやすく、難解な音楽とはまったく反対の音楽です。それでも単純で飽きが来る音楽ではありません。ブラームスやシューベルトのように内面にどんどん入っていく音楽ではありませんが、その表現力はまさに天才です。管弦楽曲などもっと評価されてしかるべきです。






posted by やっちゃばの士 at 22:28| 東京 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | リスト | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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