2009年03月12日

シューベルト ピアノ三重奏曲第1番変ロ長調

 青い空と柔らかい光。でも風は冷たい。風に揺れる運河の波のきらめきが美しい。

 胸がワクワクし、思わず春の野を歩き回りたい気分になります。こんな時にはシューベルトの明るい曲がぴったりときます。

ピアノ三重奏曲第1番変ロ長調
 あのベートーヴェンの『大公』トリオと同じ調性のこの曲は、晩年(といっても30歳)のシューベルトの曲の特徴である深遠の淵を覗き込むような暗さや深刻さがない点で、『グレイト』交響曲と並ぶ、

春の野にふさわしいワクワクした気持ちにさせる傑作

だと思います。特に第1楽章の明るい主題と、それに伴奏する小刻みな八分音符の動きが、散策する雰囲気を作り出しているのが印象的です。

足の短い作曲者が春の野を散策しているよう

この散策音型はシューベルト独特のもので、

歌曲『美しい水車小屋の娘』
ピアノソナタ第21番
『グレイト』交響曲


など明るい曲に見られます。あるときはピアノで、あるときは弦楽器で、本当にみずみずしいです。


 第2楽章以降も、音楽は深刻になることなく進みます。第2楽章のアダージョは

春の夕べをいつまでも楽しんでいたい

という雰囲気の余韻に満ちた大変美しい音楽です。段々日が長くなっていくのを感じるこの時期。夕暮れ前の青い空気に感動するのは僕だけでしょうか。


posted by やっちゃばの士 at 20:39| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | シューベルト | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月23日

ラヴェル 左手のためのピアノ協奏曲

 夜が明けるのが早くなりました。空気もどことなく軟らかで早朝の散歩に出かけたくなります。

 春先の早朝は何か新しいことにチャレンジするのにはちょうどいい

と思います。マンネリを抜け出すのは今しかない。

 朝の音楽といえば、名曲がたくさんありますが、朝を新しい出発と掛けて、今日はラヴェルの左手のためのピアノ協奏曲

 この曲のどこが朝なのかと思われるかも知れませんが、この曲の冒頭の雰囲気は夜明けをイメージさせてくれます。

低音で奏されるカオスのような音楽は日の出前の巨大なエネルギー
カオスの高まりの頂点で出る洗練された旋律は日の出のようです

ラヴェルの夜明けを描いた音楽としては

バレエ『ダフニスとクロエ』の夜明け

が有名ですが、この曲はそれ以上のエネルギーがあります。僕はこの曲に込められた作曲者の強い思いを感じます。

失意→再起→自由な創造性→感動

というストーリー性を描くことができるのではないかと考えています。この曲は第1次世界大戦で右手を失ったピアニスト、ヴィトゲンシュタインのために作曲されました。右手を失うことは、ピアニストにとって致命的なことです。傷ついた者へのラヴェルのやさしさがこの曲の根底にあるのではないでしょうか。

クープランの墓
無き王女のためのパヴァーヌ

のように、失われたものへの追憶とやさしさが込められた音楽はラヴェルの音楽の特徴であると言えるでしょう。

 この曲は単一楽章で、緩→急→緩の3部からなっています。この構成は傑作ピアノ協奏曲ト長調の構成と全く反対になっていることを考えると興味深いです。どちらもラヴェルの最高傑作だと思いますが、左手のための協奏曲の方が規模が小さいながら充実していると僕は思います。

第1部
右手を失ったピアニストの新たな出発。現実を受け入れて、前向きに出発。風はすがすがしく、生かされていることを思うと厳かな気持ちになる。それでも不安な思いをぬぐい去ることはできない。

第2部
不安を押しのけて自由な創造力を発揮する。第1部の厳かな音楽とは対照的なアクロバットを感じさせるジャズ風な音楽。前者がフィギュアスケートの基礎プログラムなら、後者はフリースタイルとでも言ったらいいでしょうか。そして、忘れてはならないのが、この小さな楽章の中で、ボレロのように多彩な楽器で同じ旋律を何度も反復させていることです。絶品という表現が適切でしょうか。ラヴェルの音楽の集大成を見るようです。

第3部
感動と追憶のフィナーレ。第1部と同じく厳かな雰囲気の音楽。最後は厳かなカデンツァで第2部の主題が回想的に演奏されるのが印象的。

posted by やっちゃばの士 at 18:06| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | ラヴェル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月27日

キーワードクラシック『卒業式』ワーグナー編

 今日から学校は春休みですが、小雪が舞い3月の下旬とは思えない寒さでした。

 社会人の身としては、3月も4月も連続したただの月にすぎませんが、学生、新社会人にとっては、卒業式を経て、進学、就職へとステップする特別な季節です。

 3月は卒業式

ということで、卒業式にふさわしい曲について書いてみます。

 やっちゃば士的「卒業式」な曲 ワーグナー編

@楽劇『ニュルンベルグのマイスタージンガー』第1幕への前奏曲

 卒業式で演奏される頻度の最も高い曲のひとつでしょう。もともと、この楽劇(オペラ)のテーマは、ドイツ芸術の伝統の賞賛と未来への希望であり、第1幕への前奏曲はそんな内容を象徴するように、力強く祝祭的な音楽です。名実ともに卒業式にふさわしい音楽だと思います。昨年のブログにも卒業式を思いながらこの曲について書きました。

http://yachaba.seesaa.net/article/88283128.html

 ちなみに、楽劇本体の音楽も、長時間ながら、飽きることがないすばらしい内容で、僕は『タンホイザー』と並んで、ワーグナーのオペラ(楽劇)の中で、歌とオーケストラとストーリーがもっともバランスよく取れた曲としてよく聴きます。ちょっとパワーがいりますが、これらの大作についてもブログで書きたいと思っています。

もう1曲強いてあげるなら


A『リエンツィ』序曲
 オペラ本体のほうは有名ではありませんが、この序曲は堂々とした安定感と崇高な感じを抱かせる傑作だと思います。ちょっと無理があるかもしれませんが、卒業式的な1曲にあげたいと思います。




posted by やっちゃばの士 at 00:26| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | ワーグナー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月30日

キーワードクラシック『卒業式』A チャイコフスキー編

 桜の花が少しずつ開いてきました。学校の入学式の頃は桜の花が満開かもしれません。

今日も「卒業式」の音楽です。一般的に卒業式にふさわしい音楽といえば、先回の記事で取り上げた

ワーグナー『ニュルンベルグのマイスタージンガー』第1幕への前奏曲
を始めとして、

ベートーヴェン『交響曲第9番』第4楽章〜歓喜の歌〜
ブラームス『交響曲第1番』第4楽章
パッヘルベルのカノン

などが上げられます。

それぞれ人によって、思い入れのある曲は異なると思いますが、僕の最も思い入れのある卒業式的な曲は

チャイコフスキーの交響曲第5番ホ短調
この曲が、実際に卒業式のBGMで使われたということを聞いたことはありませんが、やっちゃば士的には卒業の思いに浸るにはもってこいの曲だと思います。

ただし、この曲を聴くのは、卒業式前夜か卒業式後友達や学校と別れて1人になった時がいいと思います。

第1楽章
クラリネットの陰鬱な響きの序奏と悲しみがたんたんと歩き続ける第1主題。いろいろとかなえられなかった切ない思いを抱いた日々の生活。やさしい第2主題、暗く切ない思い出が愛おしい思いへと昇華されていくようです。それでも、悔しかった思い、自分の思いが届かない無念さ、無力さがこみ上げてきて、「私は悲劇の主人公」的な気持ちに覆われてしまいます。

第2楽章
チャイコフスキーが書いた音楽の中で、おそらくもっとも美しく感動的なアダージョ。彼の音楽はメロディは美しいが、単調だと批判される傾向にありますが、何度でも繰り返して聴きたい音楽です。

霧のような低弦の序奏。もやもやした思いが次第に晴れていくように、明るくなって懐かしい思い出の音楽が始まります。少しひなびたホルンの響きが印象的です。ここから美しい主題が続いていきます。

まるで、回想の空間をうねる波に揺られているような感覚
静かな波は、次第に高潮し、頂点で弾け、また静かな波に戻る

感情のクライマックスに向かって、音楽は速度を上げます。伴奏のホルンの響きが、胸の鼓動が高まるように速度を上げていくのが印象的です。

過去は二度と帰ってこない

卒業の時、過去を愛おしむ気持ちになりますが、そんな気持ちにとことん浸らせてくれる音楽だと思います。

第3楽章
チャイコフスキー得意の愛らしいワルツ。静かな回想からつぎなる舞台へのつなぎの音楽です。何か予感と期待のようなものを秘めています。

第4楽章
輝かしいフィナーレ。回想とお祭りの気分に満ちています。緩やかな序奏と青春の舞曲のような主部はチャイコフスキーのフィナーレで最も充実しています。この音楽を聴いていると

過去の思い出が走馬燈のように巡る光景

を思い浮かべてしまいます。万感の思い出を抱いて、未来へ一歩踏み出そうとする卒業生の胸の高まりにもっともふさわしい音楽です。

最後に、昨年もこの時期この曲の記事を書きました。何度も取り上げるということは、僕はよっぽどこの曲が好きなんだろうと改めて思ってしまいました。

http://yachaba.seesaa.net/article/89212536.html



posted by やっちゃばの士 at 23:49| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | チャイコフスキー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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